2025年6月27日、アジア経済論Ⅰに一般財団法人海外産業人材育成協会(AOTS)関西研修センターの山口史紗氏をお招きし、「AOTSの活動内容~海外の人材育成と技術移転、研修センターの様子」をテーマにご講演いただきました。
冒頭AOTSがこれまでアジアを中心とした在外日系製造業等で働く技術者等の日本での人材育成研修を多数実施していること、海外からの研修参加者が帰国後母国で世界46カ国で75のAOTS同窓会を自主的に組織・運営していること、300人収容可能な関西研修センターの役割や、目下実施中のインドネシア人看護師・介護福祉士候補者に対する日本語研修などの説明がありました。
また、AOTSの国庫補助事業には、新興国事業(機械、自動車、電子電機分野等の産業技術や品質管理、生産管理といった経営管理)、ゼロエミッション事業(省エネ、CO₂排出量削減)等の技術に関する人材育成が対象であり、開発途上国の技術者を対象とした研修を日本で実施していることや、日本の親会社では導入されているが海外の現地法人では導入されていないものを、日本で研修する内容となっているとのことでした。
具体的な日本での研修内容として、日本語やビジネスマナー学習等を含むコースもあり、6~13週間のコースでは生活案内、異文化適応の講義やフィールドワークなども実施しています。加えて、遠隔地見学として、5月、北九州市などを訪問しクリーンエネルギーや環境保全のエコシステムを視察したことなども言及されました。
また、研修生来日時に、関西研修センターで企画された日本文化関連行事(かるた大会、節分の豆まき、盆踊り)や、外国人研修生と接する際に気を付けていること(具体的には、平易な日本語の使用、文化の違いを確認し日本のマナーや生活習慣を伝えること、宗教観の違いに極力配慮すること)なども説明されました。その他、受講している本学学生向けに学生時代にしておいた方が良いと思われることや、就活関連でのアドバイス等もいただきました。
講義の中で、山口氏は随所に本学学生に質問や意見交換を行い、学生からも「(山口氏がAOTS就職前にされた)海外インターンシップでは、どのくらいの英語力が必要か」、「文化の違いを有する外国人研修生との対応の中で、驚いたこととしてどのようなことがあったか」といった質問が多く寄せられました。
受講後の学生のリアクションペーパーからは、「AOTSのような業務内容の仕事は初めて聞き新たなことを学ぶことができた。日本にいながら多文化や色々な人たちと触れあえて魅力ある仕事だと感じた」、「日本の企業や社会における国際的な人材育成の取り組みについて深く知ることができた。実践的な研修スキームやカリキュラムが大変多く、技術だけでなく、日本語や文化理解にも力を入れていると聞き印象的でした」、「AOTSは単に技術的なスキルを提供するだけでなく、文化交流や国際的な理解を深める重要な役割を果たしている。これによって、研修生が帰国後に自国の発展に貢献できるようになるのは非常に意義深い」、「国際協力の現場でどのようにスキームが運用されているのか具体的な事例を通じて理解を深めることができた」といったAOTS事業に対する共鳴の声が数多く聞かれた。
加えて、山口氏の業務を通じた経験談から、「今後自分が社会に出た時に、国や立場の違いを超えて、協力し合えるような姿勢を大切にしようと思いました」、「異文化交流に新たに興味を持ったので、外国人とコミュニケーションを取ったり交流できたら良いものと思う」、「研修を行うことで一番大切なことはコミュニケーションだと感じたので、コミュニケーション能力を磨いていきたいと思った」など、学生が自身の学ぶべき方向性について啓発された旨の声も聞かれました。
これからも講義では、社会で活躍する方々のお話をうかがい、本学学生がより広範な知識を得られる機会を設けていきたいと考えています。