羽衣TODAY

海外研修論に外務省国際協力局政策課の中野渉氏をお招きし、「日本の開発協力」をテーマにご講演いただきました。



2025年1月8日、海外研修論に外務省国際協力局政策課の中野渉氏をお招きし、「日本の開発協力」をテーマに開発協力の事例についてご講演いただきました。

講演前半は、ODAの概要や実際の日本の開発協力についての説明でした。
世界には「開発途上国」と呼ばれる問題を抱えた142ヵ国・地域があり、これら世界の問題を解決するための取組みが「開発協力」と呼ばれています。

深刻な渋滞問題を緩和する為のインドのデリーメトロ開通や、川によって分断された地域に橋を開通するカンボジアのインフラ整備、海岸浸食が深刻化しているインドネシアでのバリ海岸の保全事業、安全な出産の為の母子手帳の普及活動など、具体的な事例を挙げながら、「円借款」、「無償資金協力」、「技術協力」それぞれの協力の形をご紹介いただきました。

これらに共通する特徴は「その場しのぎではなく、長い目で発展を支える」、「開発途上国の自助努力の後押し」、「人間の安全保障」という目的の基に行われていることです。
今では多くの国を支援している日本も、戦後は世界銀行から支援を受けて発展してきた歴史があります。
「途上国としての日本」と「先進国としての日本」、両方の立場を経験した国だからこそ、
過去の日本と同じ状況で苦しむ国に対して、その国が必要とする援助が行われています。

また、2015年に193の国連加盟国が決定した「持続可能な世界」を目指す17の開発目標である「SDGs」にも触れ、「誰一人取り残さない」というテーマに込められた意味と、現在の日本の達成状況をご報告いただきました。開発協力は国際社会の平和と繁栄、日本の国益双方の実現に貢献することを学ばせていただきました。

後半は「日本のODAでA国の港を新設!」というテーマでグループワークを実施しました。
急激な経済成長を遂げ、日本や海外の製造業企業が多く進出しているA国では、取扱貨物量の増加による混雑で物流停滞が発生しているという設定で、日本の円借款事業として新港建設に協力をするとした場合、A国、日本、世界に対して、それぞれどのようなメリットがあるかという問いです。
学生からは以下の意見が発表されました。

【A国】
「自国の発展」
「貿易が盛んになる」
「物流停滞の解消」「混雑の緩和」
「他国の影響で技術力が上がる」
「輸出入の増加による経済成長」
「貿易拡大による収入の増加」

【日本】
「輸出先の増加」「貿易の増加」
「災害時などに支援を受けられる」

【世界】
「輸出先の増加」「貿易の増加」
「経済成長中のA国との貿易の拡大」

大学時代からNGOの海外協力に興味があったという中野氏。
国際関係の学部でインドネシア語を学び、現地への留学後は在外公館派遣員として、在デンパサール総領事館にて3年間駐在。この期間に外務省での仕事のイメージが掴めたこと、今後もインドネシアと関わっていきたいという想いから入職を決めたそうです。

現在は、外務省国際協力局政策課にて、ODAの意義や成果を広報する部署に所属し、イベントの開催や、
動画コンテンツの制作・発信、HP、SNSやパンフレットなどの媒体を用いた広報活動を行っているとのこと。

外務省というと国際協力というイメージを持たれやすいのですが、
科学分野や国際漁業管理などに係る外交政策に至るまで様々な仕事があり、
一つの分野にとらわれずに働けることも魅力の一つと仰っていました。

中野様、ご登壇いただきありがとうございました。