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羽衣国際大学

今日の出来事

HAGOROMO TODAY

南海電鉄による「インバウンド及び万博・IRから見た地域共創のまちづくり(第7回)」「公共交通事業から「総合モビリティ事業」へ(第8回)」についてご講演いただきました (「地域開発論A」「現代社会学特別講義D」「放送メディア特別講義C」)2024年11月27日

「地域開発論A」等(吉村宗隆先生担当)では、産学連携の一環として、南海電鉄が取り組む社会課題について現場の「生の声」に学ぶ授業を実施しています。毎回、南海グループ企業の様々な部署の方にお越し頂いており、第7回(11月6日)は、ツーリズム戦略部の濱口祥一氏より「インバウンド及び万博・IRから見た地域共創のまちづくり」について、第8回(11 月13日)は、経営統括部の世耕弘大氏より「公共交通事業から「総合モビリティ事業」へ」についてご講義がありました。

・「インバウンド及び万博・IRから見た地域共創のまちづくり」(第7回)
コロナ収束によるインバウンド回帰、来年には大阪・関西万博の開催、2030年はIR開業と、関西のツーリズム業界にとっては追い風のイベントが続きます。とは言え、こうした大きなイベントが私たちの暮らしにどの様な影響があるのかについては、あまりイメージが出来ていないようにも感じます。例えば、万博の「空飛ぶクルマ」に関するメディア報道では、当初目標とされていた万博での商用運航が断念されたこと等、消極的な内容が多い印象です。第7回講義のなかでは、南海電鉄の「空飛ぶクルマ」の運航に向けた取り組みについてご紹介があり、未来のイメージに繋がるお話を伺うことが出来ました。

 

いよいよ来年に迫った万博。公式キャラクター「ミャクミャク」がラッピングされた特急ラピートが機運を盛り上げ、会期中はなんばや新大阪などの主要駅から出るシャトルバスが来場者を会場に運びます。南海電鉄と万博との関係は会場へのアクセスだけではありません。2021年と2022年には関連企業と連携し「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた実証実験を実施し、2024年には和歌山県内での実用化に向けた協定を締結しています(※1,2) 。
実証実験では、ヘリコプターを代用したモニターツアーとして、舞洲(万博会場の夢洲の隣り)のヘリポートと貸し切りにされた「熊野別邸 中の島」(那智勝浦)を1時間弱で結びました。移動費用の2万円(片道)は、将来事業化された際に想定される額に設定されており、ヘリコプターの費用(17万円)やタクシー(3万円)に比べても、空の旅がより手頃になると予測されています。

※1「「空飛ぶクルマが叶える“未来型旅行体験”モニターツアー」の実施について」(南海電鉄HP)
※2「和歌山県、株式会社IHI、株式会社長大及び南海電気鉄道株式会社の「空飛ぶクルマ」の和歌山県内での実用化に向けた連携協定の締結について」(南海電鉄HP)


南海電鉄が描く「空飛ぶクルマ」の活用イメージ(上写真参照)では、ハブ拠点を大阪・和歌山に設け、近距離の都市内輸送~都市間輸送、また観光の周遊ルートとして、和歌山と伊勢志摩を海岸沿いに結ぶ「紀伊半島一周航路」など様々な航路が想定されており、眺めているだけで新たな空の移動がもたらす変化に想像が広がります。
万博を起点として新たな交通の形がまちづくりのイメージを変えて行く…、メディア報道だけでは分からない情報の詰まった貴重なご講義でした。

(補注)ヘリコプターに比べた際のメリットとしては他にも、電動なので音が静かであること、複数プロペラで安全性の面でも有利とされ、将来的には、重量運搬・緊急医療を担うヘリコプターに対して、空飛ぶクルマはより日常的な用途としての使い分けが進むと予測されています(日本政策投資銀行「空飛ぶクルマの社会実装と新しい関西観光の形~2025年大阪・関西万博を契機に新たな交通モードへ~」) 

・「公共交通事業から「総合モビリティ事業」へ」(第8回) 
第8回講義では、これまで公共交通を担ってきた鉄道やバスなどを補完・代替するような、新たな移動手段(モビリティ)のあり方についてご講義頂きました。タイトルの「総合モビリティ」とは、既存の公共交通の空白解消のために導入されるもので、①乗合タクシー、レンタルバイクやキックボードなどの交通手段、②複数の交通手段のサービスとしての統合(パーク&ライドなど)、③ICTを活用したオンデマンドバス、シェア乗りなどを総称した言葉で、従来の公共交通がカバー出来ない地域、本数の少なさなどの弱点を補うために導入が進められています。

  

「総合モビリティ」という言葉はまだ聞き馴染みのない言葉ですが、最近はアプリで予約・決済のできるレンタルバイク、キックボードを駅前や観光地で見かけることが多くなりました。また、梅田では大阪メトログループがオンデマンドバスの運行を始めており、南海電鉄は泉北ニュータウンで実用化に向けた実証実験を重ねています。

「NANKAIオンデマンドバス」(https://nankai-ondemandbus.com/
「KANSAI MaaS(関西マース)」(https://www.kansai-maas.jp/lp/
MaaS(マース、Mobility as a Service)は、バスや鉄道等の路線検索だけでなく、予約や支払いまでアプリで一括で行えるサービスで、KANSAI MaaSは、関西の主要7鉄道が連携しています。

・「交通(モビリティ)は交通手段だけではなく、まちづくりの装置の一つ」 
こうした新たなモビリティは、既存の公共交通が定時・定路線であるのに比べて便利で、オンデマンドバスもタクシーより安い…このように書くとメリットばかりのようですが、総合モビリティが推進される背景には、鉄道事業の前提としていた大量輸送が、人口減少によって成り立たなくなっているという厳しい現実があります。身近な例として、富田林や南河内の足であった金剛バスは、運転手不足によって運営が続けられなくなりました。

では、どうすれば人手不足の路線を存続させることができるのか?情報技術の利用が一つの解決策です。大阪万博で使用された自動運転バスは、金剛バスでの運行が予定されており、また、和歌山で実証実験を行った南海電鉄の自動運転車両は高師浜線での導入が検討されています。オンデマンドバスが、A Iによる最適な運行ルート・配車によって可能になったように、人口減少時代の総合モビリティは、先端技術によって私たちの足と沿線のまちづくりを支えることになりそうです。そんな現実がすぐそこまで来ていることを実感した講義でした。

南海電鉄 運転士不足に備えた電車の自動運転 実証実験を公開」(NHK/和歌山NEWS WEB)

 

 


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